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特許協力条約(PCT)に基づく特許出願


PCTに基づく特許出願とは?

PCTに基づく特許出願は、国際出願日が認められると各指定国において国際出願日から正規の国内出願としての効果を有するとされ、国際出願日は各指定国における実際の出願日とみなされるという効果を有するものであり、我が国を指定国に含む国際出願を国内出願と同じように特許法上の手続きにつなげるために設けられたものであります。

「国際特許出願」とは、国際出願であって、指定国に日本国を含むもので、その国際出願日にされて特許出願とみなされた国際出願のことをいいます。


外国語特許出願の翻訳文について

「外国語特許出願」とは、外国語でされた国際特許出願のことをいいます。外国語特許出願の出願人は、優先日から2年6月以内(国内書面提出期間内)に国際出願日における明細書、請求の範囲、図面(図中の中の説明に限ります)及び要約の日本語による翻訳文を特許庁長官に提出しなければなりません。 この優先日から2年6月のことを「国内書面提出期間」といいます。

ただし、国内書面提出期間の満了前2月から満了の日までに184条の5第1項に規定する「国内書面」を提出した場合には、当該書面の提出の日から2月以内に翻訳文を提出することができます。
この期間のことを「翻訳文提出特例期間」といいます。

国際書面提出期間または翻訳文提出特例期間に明細書の翻訳文及び請求の範囲の翻訳文(明細書等の翻訳文)の提出がなかったときは、その国際特許出願は取り下げられたものとみなされます。

「国内書面」には、①出願人の氏名又は名称及び住所又は居所、②発明者の氏名及び住所又は居所、③国際出願番号その他の経済産業省令で定める事項を記載する必要があります。


翻訳文の提出の救済手続き

明細書等の翻訳文の提出がなく、取り下げられたものとみなされた国際特許出願の出願人は、国内書面提出期間内に明細書等の翻訳文を提出することができなかったことについて正当な理由があるときは、その理由がなくなった日から2月以内で国際書面提出期間の経過後1年以内に限り、明細書等の翻訳文を特許庁長官に提出することができます。これにより提出された翻訳文は、国内書面提出期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなされます。


国内処理基準時とは?

「国内処理基準時」とは、国内書面提出期間が満了する時、または国内書面提出期間内に出願人が審査請求をするときは、その請求の時のことをいいます。


特許庁長官からの補正命令

特許庁長官は、次に掲げる場合には、補正命令をすることができます。

①国内書面を国内書面提出期間内に提出しないとき
②7条1項~3項(未成年者等の手続きをする能力)9条(代理権の範囲)に違反しているとき
③国内書面の提出の手続きが、経済産業省令で定める方式(国際出願番等)に違反しているとき
④要約の翻訳文を国内書面提出期間内に提出していないとき
⑤納付すべき手数料を国内書面提出期間内に納付しないとき

指定した期間内に、補正をしない場合には、特栽特許出願を却下することができます。


条約19条の補正について

日本語特許出願の出願人は、条約19条の補正をしたときは、国内処理基準時の属する日までに、補正書の写しを特許庁長官に提出しなければなりません。 外国語特許出願の出願人は、条約19条の補正をした場合であって、すでに請求の範囲の翻訳文を提出したときは、国内処理基準時の属する日までに当該補正後の請求の範囲の日本語による翻訳文をさらに提出することができます。


条約34条の補正について

国際特許出願の出願人は、条約34条の補正をしたときは、
・日本語特許出願の場合には、国内処理基準時の属する日までに、補正書の写し
・外国語特許出願の場合には、国内処理基準時の属する日までに、補正書の日本語による翻訳文
を提出しなければならない。この期間内に、手続きがされなかったときは、条約34条の補正はされなかったものとみなされます。


国際公開と国内公表の効果等

特許庁長官は、翻訳文が提出された外国語特許出願について、特許掲載公報の発行をしたものを除き、国内書面提出期間または翻訳文提出特例期間の経過後、遅滞なく、「国内公表」をしなければなりません。 「国際公開」は、日本語、英語、フランス語、ドイツ語、中国語、スペイン語、ロシア語、アラビア語、韓国語、ポルトガル語でされた出願についてはそれらの言語で、それ以外の言語でされた出願は、国際調査機関の責任で作成された英語の翻訳文を公開します。

国際特許出願の出願人は、日本語特許出願については国際公開があった後、外国語特許出願については国内公表があった後に、国際特許出願に係る発明の内容を記載した書面を掲示して警告した時は、その警告後特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対し、その発明が特許発明である場合にその実施に対して受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払いを請求することができる。


在外者の特許管理人の特例

日本国内に住所又は居所を有しない者は、政令で定める場合を除き、その者の特許に関する代理人であって、日本国内に住所又は居所を有しない者によらなければ、手続きをし、この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定により行政庁がした処分を不服として訴えを提起することができません。ただし、日本国内に住所又は居所を有しない者が、一時的に日本に滞在している場合、または国際特許出願の場合には、国内処理基準時までは、特許管理人によらないで手続きをすることができます。日本国内に住所又は居所を有しない者は、国内処理基準時の属する日後経済産業省令で定める期間内(3月)に、特許管理人を選任して特許庁長官に届け出なければなりません。その届け出がなかったときは、その国際特許出願は、取り下げられたものとみなされます。


仮専用実施権の登録について

日本語特許出願については、国内書面を提出して、納付すべき手数料を納付した後、外国語特許出願については、国内書面及び翻訳文を提出して、納付すべき手数料を納付した後であって国内処理基準時を経過した後でなければ仮専用実施権の登録を受けることができません。


出願審査の請求の時期の制限(184条の17)

国際特許出願の出願人は、
日本語特許出願の場合には、国内書面を提出し手数料を納付した後、
外国語特許出願の場合には、国内書面を提出し翻訳文を提出し、手数料を納付した後、
でなければ出願審査の請求をすることができません。

国際特許出願の出願人以外の者は、
国内書面提出期間又は翻訳文提出特例期間の経過後でなければ出願審査の請求をすることができません。


29条の2について(184条の13)

国際公開がされている場合には、29条の2のいわゆる拡大された先願の地位を有する場合があります。ただし、外国語特許出願の場合には、明細書及び請求の範囲の翻訳文が提出されないことにより出願が取り下げられたものとみなされたときは、29条の2の他の特許出願からは除外されます。PCTにより日本国を指定国とする国際出願は、我が国の正規の国内出願としての効果を有することになるが、その効果を維持することが手続的に確定するのは、翻訳文が提出されて手数料が納付された時点であり、翻訳文を提出しない外国語特許出願については、39条の地位を有しておらず、このような出願に対してまでも拡大した先願の地位を与えることは適当ではないと考えられるからです。ただし、要約の翻訳文が提出されずに、出願が却下された場合には、29条の2の地位を有します。


わかりやすい国際特許出願の一問一答


Q1. 国内書面はいつまでに提出しますか?

Q2. 優先日とはいつですか?

Q3. 国内書面を提出しなかった場合には、どうなりますか?

Q4. 外国語特許出願の場合、明細書、請求の範囲、図面、要約の翻訳文は、いつまでに提出しますか?

Q5. 明細書及び請求の範囲の翻訳文が提出されないと、その出願はどうなりますか?

Q6. 図面の中の説明の翻訳文が提出されないと、その出願はどうなりますか?

Q7. 要約の翻訳文が提出されないと、その出願はどうなりますか?

Q8. 翻訳文提出特例期間とはなんですか?

Q9. 国内処理基準時とは、いつですか?

Q10. 自己指定とはなんですか?



Q1. 国内書面はいつまでに提出しますか?

国内書面は、優先日から2年6月以内に提出する必要があります。この期間のことを国内書面提出期間といいます。


Q2. 優先日とはいつですか?

優先日とは、特許協力条約2条(ⅺ)の優先日のことをいいます。
(a) 国際出願が第八条の規定による優先権の主張を伴う場合には、その優先権の主張の基礎となる出願の日
(b) 国際出願が第八条の規定による二以上の優先権の主張を伴う場合には、
    それらの優先権の主張の基礎となる出願のうち最先のものの日
(c) 国際出願が第八条の規定による優先権の主張を伴わない場合には、その出願の国際出願日



Q3. 国内書面を提出しなかった場合には、どうなりますか?

国内書面を提出しない場合には、特許庁長官から補正命令がなされます。その指定された期間内に補正をしないときには、その国際特許出願を却下することができます。


Q4. 明細書、請求の範囲、図面、要約の翻訳文は、いつまでに提出しますか?

外国語特許出願の場合、明細書、請求の範囲、図面、要約の翻訳文は、国内書面提出期間内(優先日から2年6月以内)に特許庁長官に提出する必要があります。


Q5. 明細書及び請求の範囲の翻訳文が提出されないと、その出願はどうなりますか?

その国際特許出願は取り下げられたものとみなされます。我が国においては、翻訳文に記載された事項が権利範囲となります。なぜなら、
①特許権は日本語で発生させる必要があり、
②特許権の範囲が外国語書面で確定されると、第三者の監視負担が増大し、
③審査の対象を外国語書面とすると、審査に負担がかかり、迅速な審査ができないからです。


Q6. 図面の中の説明の翻訳文が提出されないと、その出願はどうなりますか?

図面の中の説明ないものとして取り扱われます。国際出願日に図面が提出されていれば、その図面をもって現行法上の図面が提出されたことになるので、図面の中の説明がないものとして扱えば十分だからです。


Q7. 要約の翻訳文が提出されないと、その出願はどうなりますか?

特許庁長官により、補正命令がなされます。その指定された期間内に翻訳文を提出しないときには、その国際特許出願を却下することができます。要約は、もっぱら技術情報として用いることを目的としているので、提出がない場合には、手続きの補正を命じて提出させれば足りるからです。


Q8. 翻訳文提出特例期間とはなんですか?

国内書面提出期間の満了前2月から満了の日までに、国内書面を提出した場合には、その書面の提出の日から2月以内に翻訳文を提出することができます。この期間のことを翻訳文提出特例期間といいます。出願人が国内移行するための判断が国内移行期間の間際になることもあり、その場合には、翻訳文の作成期間が圧迫されることのにより品質の十分でない翻訳文が提出されていたことから、審査効率の向上かつ審査処理の促進を図るために設けられた期間です。


Q9. 国内処理基準時とは、いつですか?

国内書面提出期間が満了する時、または国内書面提出期間内に出願人が出願審査の請求をするときは、その請求の時です(184条の4第6項)


Q10. 自己指定とはなんですか?

一または二以上の特許出願(国内出願に限る)、あるいは日本国のみを指定国として含む国際出願を基礎とした優先権の主張を伴う国際出願において、日本国を指定国として含めることをいいます。