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権利行使について


特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有します。 また特許権者は、その特許権について専用実施権の設定をすることができ、他人に通常実施権の許諾をすることができます。特許権を侵害とは、権限なき第三者が業として他人の特許発明を実施すること、または一定の予備的行為をいいます。

差止請求権

差止請求権とは、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる権利のことをいいます。

損害賠償請求権

特許権者または専用実施権者は、故意又は過失により特許権又は専用実施権を侵害した者に対し損害賠償請求権の行使をすることができます。過失については、特許法103条の規定により「他人の特許権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定する」ものとされます。

不当利得返還請求権

特許権者または専用実施権者は、特許権又は専用実施権を侵害した者に対し、不当利得返還請求権の行使をすることができます。

信用回復の処置

故意又は過失により特許権又は専用実施権を侵害したことにより特許権者又は専用実施権者の業務上の信用を害した者に対しては、裁判所は、特許権者又は専用実施権者の請求により、損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、特許権者又は専用実施権者の業務上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができます。

通常実施権について


通常実施権は、大きく分けて3種類あります。
「法定通常実施権」 「裁定通常実施権」 「許諾による通常実施権」です。

「法定通常実施権」

「職務発明による通常実施権(35条)」とは、使用者等が従業者等が職務発明について特許を受けたとき、または職務発明について特許を受ける権利を承継した者がその発明について特許を受けたときに、その特許権について有する通常実施権のことをいいます。従業者等がした職務発明については、使用者は設備や資金を提供するなど、直接間接的にその発明の完成に貢献しているという理由で認められる通常実施権です。

「先使用による通常実施権(79条)」とは、特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、または特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日本国内において発明の実施である事業をしている者、またはその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において認められる通常実施権のことをいいます。特許権者と先使用権者の公平を図り及び事業設備の保護の観点から認められている通常実施権です。

「特許権の移転の登録前の実施による通常実施権(79条の2)」とは、特許権の移転の登録の際現にその特許権等を有していた者に対し、その移転の登録前に、特許が冒認等により無効理由を有することが知らないで、日本国内において発明の実施である事業をしている者、またはその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において認められる通常実施権のことをいいます。この場合には相当の対価が必要です。

「無効審判の請求登録前の実施による通常実施権(80条)」とは、一定の条件を満たす者に対し、特許無効審判の請求の登録前に、特許が無効理由を有することを知らないで、日本国内において発明の実施である事業をしている者、またはその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において認められる通常実施権のことをいいます。この場合には相当の対価が必要です。

「意匠権の存続期間満了による通常実施権(81条、82条)」とは、特許出願の日前または同日の意匠登録出願に係る意匠権がその特許出願に係る特許権と抵触する場合において、その意匠権の存続期間が満了した時に、その意匠権者等に認められる通常実施権のことをいいます。この場合であって、意匠権についての専用実施権又は意匠権若しくは専用実施権についての通常実施権を有する者は、相当の対価が必要です。

「再審の請求登録前の善意実施による通常実施権(再審により回復した特許権の効力の制限176条)」とは、無効にした特許に係る特許権等が再審により回復したとき、又は拒絶をすべき旨の審決があつた特許出願等について再審により特許権の設定の登録等があつたときは、当該審決が確定した後再審の請求の登録前に善意に日本国内において当該発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者に対し、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において認められる通常実施権のことをいいます。


「裁定通常実施権」

裁定通常実施権には、
「不実施の場合の通常実施権の設定の裁定(83条)」
「公共の利益のための通常実施権の設定の裁定(93条)」
「自己の特許発明を実施するための通常実施権の設定の裁定(92条)」の3種類があります。

「不実施の場合の通常実施権の設定の裁定(83条)」は、特許発明の実施が継続して3年以上日本国内において適当にされていないときに(出願の日から4年を経過していることが必要です)、特許権者または専用実施権者に通常実施権の許諾を求めたが、協議が成立せずまたは協議をすることができないときに特許庁長官に請求する裁定のことをいいます。「不実施の場合の通常実施権の裁定」は、実施の事業とともにする場合に限り移転することができます。

「公共の利益のための通常実施権の設定の裁定(93条)」は、特許発明の実施が公共の利益のために必要であるときに、特許権者または専用実施権者に通常実施権の許諾を求めたが、協議が成立せずまたは協議をすることができないときに経済産業大臣に請求する裁定のことをいいます。公共の利益のために必要であるときとは、例えばガス事業に関する発明であって、その発明を実施すればガス漏れが防止できてガス中毒が著しく少なくなるような場合のことをいいます。「公共の利益のための通常実施権の設定の裁定」は、実施の事業とともにする場合に限り移転することができます。

「自己の特許発明を実施するための通常実施権の設定の裁定(92条)」とは、
・自己の特許に係る特許出願の日前の出願に係る他人の特許発明を利用する自己の特許発明を実施するために、特許権者等に通常実施権の許諾を求めたが、協議が成立せずまたは協議をすることができないときに特許庁長官に請求する裁定のことをいいます。当該裁定による通常実施権は、実施の事業のとともに移転したときはこれらに従って移転し、実施の事業と分離して移転したとき、または消滅したときは消滅します。

・また、上記の裁定を請求された他人は、裁定の請求があった際の答弁書提出期間ないに、特許庁長官に通常実施権を設定すべき旨の裁定を請求することができます。当該裁定による通常実施権は、その権利の移転に従って移転し、その権利が消滅した時は消滅します。

「自己の特許発明を実施するための通常実施権の設定の裁定」は、①裁定制度の円滑な運用を図ること、②先願特許権者等と後願特許権者等の利害の調整を図ること、③裁定がその調整のうえで円滑に行われること、④発明が相互に有効利用されること、を目的として設立されています。


「許諾による通常実施権」

許諾による通常実施権とは、特許権者や専用実施権者からの許諾による通常実施権のことをいいます。通常実施権者は、設定行為で定めた範囲内において、業として特許発明の実施をする権利を有します。許諾による通常実施権の場合、特許権者または専用実施権者からの承諾を得た場合、実施の事業とともにする場合、相続その他の一般承継の場合に限って移転することができます。